| 年輪の広がっている方向を見ても方位はわかりません |
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年輪は樹木の年齢を示すのみでなく、道に迷った時の道標(方位)ともなると教えられてきました。
「夏と冬の成長差が年輪をつくり、日当たりのよい南側はよく生長する。即ち、生長のよい南側の年輪幅が広くなり、南の方向を示すようになる。」
もっともな理由であり、疑いを抱くこともなく信じられています。
しかし、「切り株を見れば、方位が分かる」 このいわゆる一般常識は、どうも違うようです。 |
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一昨年から、太陽の郷の松林が、一斉に枯れだし、2年間に200本以上の松を切り倒しました。恐らくなにか「松が枯れる環境」が発生したのでしょう。
樹木医をはじめ、多くの人に相談しますと、「これは ”松枯れ病・マツの材線虫病” である。かみきり虫の駆除とマツの焼却処分が必要だ。」との答えが必ず返ってきます。
「多量の松枯れ = マツの材線虫病」の行政が関与した常識については、多くの要因の検討が必要であると思われますので、今回は専門家でなくてもできる年輪についての調査についてお話します。
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先ず、年輪の標示方法を決めます。
切断面に現れる、色の濃い部分と薄い部分を一年分の年輪とし、その年の生長巾を年輪巾とします。
幹の断面は、円でなく、楕円に近いと思われますので、長径と短径の交点を樹幹中心としました。
また、切り口にみられる最初の年輪を、年輪中心とします。 |
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従来、年齢巾の大きい方向を南としてきました。即ち、樹幹中心の北側に年輪中心があることです。
そこで、年輪巾の生長方向を知るため、簡単な器具をつくってみました。
太陽の郷には、素人ですがこのような器具を容易につくったり、器具を切り株にあて、黙々と計測してくれる人がいます。
アクリル板に、分度器を彫り込み、コンパスを組み込んだものです。これを切り口にあて、楕円の長径と短径の交点を求めて樹幹中心をきめ、年輪中心方向と距離を測ります。
樹幹の太さは、幹の周囲を計測し、3.14で除して平均直径(目通り・目通り直径)としました。 |
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年輪の本数を数える仕事は、かなり面倒な作業です。色の濃い部分が明瞭でないもの、木材の中心で生活機能を失った帯紅色の部分(心材・赤身)の年輪、腐敗等で年輪が失われているものなど、年輪をはっきり判定できないことがしばしばあります。
そこで、植えた時期がおよそ分かっている松を対象に、先ず年輪を調べてみます。 |
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太陽の郷の前身である南湖院(結核療養所)は、1921年(大正10年)汚水浄化設備を造り、100,000 の敷地に点在する病舎の汚水を処理しました。
地下に造られた大きな第一・第二腐敗槽、煉瓦積みの酸化槽をもつ、当時としては大変先進的なものでした。写真は昭和10年代のものですが、浄化設備建設当時植えた松が、かなり大きくなっています。 |
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平成11年5月、樹齢約80年(浄化設備建設時植えたもの)の松が枯れ、切り倒しました。
年輪中心部分は腐蝕し、年輪の存在が不明であり、1983年〜1987年の年輪も不明瞭です。そこで表面を平滑に削ってみることにします。
写真の一部(1983年付近)を拡大します。 |
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太陽の郷は、昭和58年(1983年)本格的な省エネルギー温水プールを建設しました。空調(空気を暖める暖房)設備をもたず、プール水を熱源とした輻射暖房により、快適な温熱環境を実現できたことや、省エネルギー率70%以上を達成したことなどの良い結果を得ましたが、松の年輪にもその影響がみられるようです。
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建設工事が樹木に与える影響は強烈でした。工事後数年間は、ほとんど生長せず、年齢もはっきりしません。 |
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地下水の汲み上げ、松周囲の舗装等樹木の生育に悪い影響を及ぼす因子が、建築工事には付き物です。年輪巾が非常に小さいことで、生長が阻害されたことがはっきりわかります。しかし、地中の状況が回復すると、生長巾は急に大きくなり、年輪巾の拡大や色の濃淡のぼけなど、地下蓄熱の影響が予想されます。
集熱板(300 )で集めた太陽熱を、地下砂礫層に蓄熱していますが、この夏期の余剰熱(年間約100Gカロリー)を求めて、松は太い根を差し向け、きれいに積んだタイルを見事に破壊してしまいました。何時の日か、タイルを破壊した根の先端を掘り当て、松と温熱環境の関わりを探りたいものです。
植物(生物)の生きるための努力は、想像を絶するものがあります。掘り起こした松の根をみますと、その場所におこった自然の変化が、きわめて複雑なものであることに驚かされます。 |
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高さ約10mの建物の北側にある松の切断面で、樹幹の周囲に松ヤニが少しみられます。一昨年から多くの松を伐採しましたが、松ヤニがみられたのはこの例の他数本しかありませんでした。
周囲120cm(直径約38cm)、年輪は88本数えられました。
樹幹中心から190°、6.5cmに年輪中心があり、年輪巾は北北東に広がっています。
切り倒したときの幹には下枝が全くなく、高さ15m以上の直立した貧弱な姿の松でした。 |
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西側に広い空き地(通路)があり、太い枝が西に長く延びた松です。年輪は55本で、比較的若い松です。
放射状にみられる汚い着色は、カビの一種と考えられますが、まだくわしく調べていません。
ここ数年、松林のなかにいても松ヤニの臭いが全くなく、何となくカビ臭いことに関係があるのか、枯れ松を切り倒して数週間のうちに、樹幹周辺から中心に向かい放射状の斑点が広がる例が多いようです。しかし、赤身(心材)部分にまで広がった例はなく、白太(白身)部分との構造上の差が予想されます。周囲144cm(平均直径
46cm)樹幹中心より 115°、8.2cmに年輪中心があります。 |
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現在まで、66本の枯れ松の調査を終わりましたが、一般常識とは異なり、南に年輪巾が広がっている松は、一本もありませんでした。 |
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| 太陽の郷は、相模湾に面しています。昼間は海からの強い南西風が吹き、多くの松は北東方向に傾いています。海岸地方によく見られる独特の樹形です。そこで、樹形と樹幹切断面にみられる年輪の形に関連を求めます。 |
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幹・枝・根・葉・花等には、それぞれ生体としての固有の役割がある筈です。このうち、幹・枝・根には、樹木を支え水分養分(エネルギー)を輸送する共通の役割があります。強い風に耐え、葉を日光に当てるため、高く広く樹形を保つためには、根・幹・枝の支持力が重要です。
年輪巾の生長度合いは、局所の日当たりに関係するのでなく、応力(stress)(この場合は圧力・圧縮)に対する生体反応と考える方が順当ではないでしょうか。
太く曲がった枝の断面です。
日当たりは当然上部に多く、枝の下の部分は影になります。しかし、年輪中心は、枝中心より上方にあり、幹からでる枝を支える生体の努力がうかがえます。
枝は、幹に近い断面ほど楕円形であり、年輪中心は上方にあります |
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樹齢約35年、樹幹周囲95cmの若い松の根です。
まっすぐ下に延びる太い直根と、浅く放射状に広がる5本の根がありました。樹幹は南東に傾き、写真にみられます3本の根が幹の傾きを支えています。
根の断面は卵型であり、年輪中心は根断面の下方にあり、局所に加わる応力に対する生体反応の典型といえます。 |
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