茅ヶ崎 太陽の郷
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太陽の郷の小径

くず(葛)被害への対策


光(熱)を反射する(太陽の郷の試み)
 
[写真1] 太陽の郷玄関
 
ここは、湘南海岸の広い敷地に30年前に設立したお年寄りのお住まい「茅ヶ崎太陽の郷」(有料老人ホーム)です。
太陽の郷は、高齢者に適する生活環境とは何かを、様々な面から考え、実施(実験)しています。
今回は、太陽の郷の建物に利用した反射(効果)について、実施例とその結果をお話します。
光や熱は、ものの表面で、反射・透過(伝導)したり、吸収されたりしますが、これを上手に利用しようと思います。今回移設した温水プール(リハビリテーション研究室(以下、リハ研)プール)でも、反射を上手に使っていますので、どうぞご覧下さい。では、建物外装の反射利用から話を進めます。
 
刻々変化する壁画(景色の鏡像)
写真2は、昨年の秋の太陽の郷玄関口です。
ガラスに映った(反射した)南京ハゼの鮮やかな紅葉が目を引きます。遠くに見える丹沢山塊には雨雲がかかっていますが、太陽の郷上空はまだ晴れていて、今を盛りの紅葉を一層鮮やかなものにしています。
[写真2] 玄関ガラスの映像
 
こんな日には、昔はよく夕立があったものですが、この日も、待たれる夕立はありませんでした。最近の気象は、すっかり変わりました。夕立といえる雨は、昨年一度もありませんでした。
磨いたガラスに映る鏡像は、時々刻々変化する壁画であり、外出から帰った老人ホームの住人や来客をお迎えする格好の仕組みです。(太陽の郷方式)
ただし、景色に見とれていると、ガラスにおでこをぶつけます。ガラスに貼った丸印や足下の植木鉢が、衝突よけ・注意喚起に役立つようです。最近、ぶつかる人はいなくなりました。(詳しくは、太陽の郷の小径「反射と鏡像」参照)

写真3は、食堂の窓ガラスに写った庭の緑です。食堂前の植え込みが大きくなり、部屋全体が暗い感じとなったので、思い切って枝を整理しました。整枝して風通しをよくすると、庭全体が明るくなり、ガラス(鏡)に反射する鏡像が強調され、内部が見えにくくなります。この窓にキジバトがぶつかったのです。
 
外から室内天井の蛍光灯ははっきり見えていますが、テーブルや椅子はよくよく注意して見て、やっと認識できる程度です。木々の緑、芙蓉の花、白い椅子などは、ガラスに映ったものです。部屋内外の実像と鏡像の区別はつきません。
この状態では、先を急ぐ鳥には、到底見分けはつかないでしょう。可哀想な結果となった跡が写真4に残されています。
[写真3]食堂の窓ガラスに写る庭の景色
 
写真4は、

(1)  かなりのスピードで、ガラスに直角に衝突したキジバトの印章です。油とほこりが印肉となって、哀れな最期を鮮やかに残しています。
(2) 室内の撮影者の鏡像です。

きれいなガラス磨きの悲劇です。
[写真4]窓ガラスに残るキジバトの印章
 
「建物の照明は、周囲を暗くすることから始まる」
照明の大家の言葉です。太陽の郷の周囲は暗く、効果的建物照明が期待できます。
高齢者の住まい「太陽の郷」は、落ち着いた静かな生活の場です。温かい照明が望みです。また、設備費や運転経費は、できるだけ少なくしたいものです。
[写真5]玄関の左側外壁面の照明
[写真6]玄関の右側外壁面の照明
 
そこで、壁面に反射材料を貼りました。
リブ状の折板(ガリバリューム鋼板)を外壁材とし、ナトリュームランプ(400W)を光源に、建物の照明を試みました。約500の壁面を、400Wのランプで照明し、温かい感じを出すことができました。(写真5・6)

以上の経験から、建物の照明には、(1)反射率の高い壁面材料を使うこと、(2)外壁材表面の形状が凸凹(粗面)であること、(3)壁面に対する光の入射角を工夫すること、(4)光源(発光体)の色を選ぶことなどで、面白い結果が得られることが分かりました。
 
外の光(熱)を建物内部に誘導する
次に、太陽の光(熱)エネルギーを建物内部に誘導する工夫を紹介します。
(1) 光(熱)が、建物内に移動する場合、内外境界で反射・透過(伝導)・吸収が起こりますが、これらの現象を組み合わせ、効率よく誘導することを検討しました
(2) 光(熱)エネルギーの源泉(太陽)から、必要部分に直接到達するものを直射光とし、間接的(反射)に到達(移動)するものを、反射光とします。
(3) 次に、反射する面の反射率が高いもの(吸収率の低いもの)と、低いもの(吸収率の高いもの)に区別します。
(4) 平滑面(鏡面)と凸凹面(粗面)により、効果の差を考えることにします。いわゆる鏡面反射と粗面反射(乱反射)の使い分けです。以下、博修館・リハ研について、上記4項目を前提に説明します。
 
博修館の反射利用例
博修館は、お年寄りの災害時避難のために準備した建物です。
半地下に居住部分があり、ライフラインに損傷が起こっても、ある期間耐えられる施設です。寒く(暑く)ない明るい環境で生活できることや、意思伝達が容易にできるよう、声がよく響く構造を備えた建物で、化石燃料をほとんど消費せずに、良好な生活環境を維持できる施設です。
 
写真7は、お昼近くの博修館の写真です。
太陽エネルギー(光・熱)を取り入れる窓ガラスに、薄い雲に見え隠れする太陽と、雨雲の鏡像(反射像)が映っています。
[写真7]博修館南面の大きな窓
 
写真8は、南面の広いガラス窓(1)から、天空光(雲などで反射した散乱光)がガラスを透過して室内に入り、到達先で反射して拡散している様子です。曇天であり、太陽の直射光はありません。

(1) ガラス窓(天空光の受入れ口)
(2) 凸面反射板(平滑面)
(3) 床反射面(平滑面)
(4) 天井反射板(粗面)

約30のガラス窓(1)を透過した光エネルギー(天空光)は、(2)(3)(4)により反射して方向を変え室内に広がります。
[写真8]博修館の明るい内部
(南面を見る)
 
博修館は、相対する壁面(反射面)が平行でない特徴を持っていますが、この構造は、光の拡散に有効です。また、普段はコーラスや楽器演奏などでも使われますが、優れた音響効果が得られています。
 
写真9は、建物の南側(ガラス窓面)から、北壁面に至る空間の写真で、入射光(天空光)が均等に奥まで広がっていることが分かります。
なお、冬期(冬至)には、床(イエローマーブル石張りの平滑面)の北の端まで直射光が入ります。
お昼ころ、直射光を背に部屋の中央に立つと、自分の影が北の壁に映りますが、これが、立像と倒像です。立像の影は、直射光による影であり、倒像の影は、床に出来た影の像でしょうか。

石張りの平滑な床をワックスかけすると、効率のよい反射面になります。
[写真9]博修館の南側から見た明るい室内
 
窓のない地下室を自然光で照明
避難施設として作った博修館は、自然光による照明を原則としています。また、水洗便所の位置を、排水が自然流下できるよう公共下水道管の高さに合わせるなど、電力供給がストップしても、施設が機能するように考えました。
 
[写真10]トップライトのみの十分な明るさ
[写真11]ストロボ撮影
 
写真10は自然光のみ、写真11は自然光+ストロボで、便器内面およびタイル面が明るく写っています。避難生活には、左の自然照明のみで十分です。
 
リハ研準備棟およびプール棟の反射利用例
リハビリテーション研究室は、水中リハビリ用施設として建設しました。1930年、旧南湖院の検査室兼医局として建築した建物を、準備棟に改修し、1983年に建設した「太陽の郷スポーツガーデン」のプール棟を移築したものです。
改修に当たっては、太陽の郷の運営で得られた知見、特に自然エネルギーの利用を重視しています。この建物での、反射の利用手法を紹介します。
リハ研は、下の平面図・断面図に示すようにプール棟と準備棟で構成されており、プール棟の南側に準備棟が近接して配置されています。
平面図
 
断面図
 
プール棟の南に位置する準備棟の屋根は、プール棟の天空光利用に最適です。エネルギー密度のきわめて低い天空光(反射光・散乱光)の利用には、光を受ける広い面積の確保が必要であり、受けた光をどのように移動させるかが問題ですが、ここでは、準備棟北側屋根面の粗面反射を利用しました。
準備棟北側屋根の巨大なレフ板(反射板)がプール棟側に傾き、天空光をプール棟の南側屋根の下半分に取り付けられているトップライト面を通して、プール棟室内に供給(反射誘導)してくれます。反射率の高い塗料を北側屋根面に塗装することで実現しました。

写真13に、この様子を示します。
(1)がプール棟、(2)が準備棟です。(3)が反射屋根面で、準備棟屋根の北側面のみ反射ペンキを塗っています。
この写真は、曇天時に撮影しています。反射屋根面は、天空光を映していますので、アスファルトシングル葺きの黒い屋根のように、空との識別がはっきりしません。(プール棟室内から見ると、近接して圧迫感があり目障りな準備棟の屋根を消し去る効果があります。)

(4)(5)は、準備棟のためのトップライトで、(4)は天空光用あかり取り、(5)は換気兼採光窓です。前項の博修館で述べた光の活用法です。
[写真13]プール棟、準備棟、反射屋根面
 
[写真14]男子ロッカー室
[写真15]男子トイレ
 
男子ロッカー室・男子トイレは、プール棟に面しているので窓を設けていません。この窓のない部屋の照明に、天空光用あかり取り(4)とそのあかり取り(トップライト)から天井面までをつなぐ粗面反射板を組み合わせて光を誘導し、写真14(男子ロッカー室)、写真15(男子トイレ)で見られるように、十分な明るさを自然光照明で確保しました。
 
写真16は、準備棟廊下の明るさを示すものです。
朝8時、朝日が準備棟入り口から差し込みます。
ワックス塗りの床(平滑面)は、斜めに差し込む直射日光を、効率よく反射して拡散させます。天井面の反射幕も、この光拡散に大きな役割を果たしています。

80年前の小屋組の様子が、人工照明がなくても、よく見ることができます。

[写真16]準備棟廊下の明るさ
 
さて、いよいよプール棟に入ります。
プール棟では、内部仕上げ面に、放射面と反射面の役割を担当させています。
プール表面を(1)ブルーシート(写真17)と、(2)アルミシート(写真18)で覆ったものと、(3)プール水面を露出したもの(写真19)の反射光の色を比較しました。なお、色比較を容易にするため、3つとも直射光のない薄曇り時の天空光を光源としています。
 
写真17では、トップライトより侵入した天空光は、ブルーシートで吸収された後、青色の反射光となり室内に拡散します。
可動式断熱戸下面のアルミ塗装面をはじめ、内壁全体が、拡散光を反射して、青色となっています。
[写真17]プール水面をブルーシートで覆う
 
写真18、水面を覆っているアルミシートは、天空光を反射して室内に拡散させていますが、反射率が高い(特定の色を吸収しない)ので変色せず、天空光色のまま(いわゆる固有の色を持たないまま)広がっています。
[写真18]プール水面をアルミシートで覆う
 
写真19、天空光は、プール水によって赤が吸収されて水色になり、室内に拡散します。
なお、波のない平滑な水面には、トップライトや構造体の鏡像が映っています。
[写真19]プール水面のまま
 
写真20は、冬期(2月)に、直射光が入射角を下げて、トップライトから奥深くまで入った状況です。直射光は、幅広く水に侵入し、天空光のみの時より光量が格段に多く、プール棟全体に水色の光が、濃く鮮やかに広がっています。
[写真20]冬期の直射光の入った状態
 
写真21は、7月晴天昼過ぎに撮影した写真です。写真中の(1)〜(4)の説明は、以下の通りです。

(1) 準備棟北側の屋根(反射塗料を塗装した粗面反射板。直射光を反射しているので、白く見える)
(2) 黒色塗料塗装壁面(壁面に到達した光を吸収し、黒く見える)
(3) 可動断熱戸下面のアルミ塗装面(プールからの光を反射し、水色に見える)
(4) 可動断熱戸下面のアルミ塗装面(プールサイド床タイルの光を反射し、茶色に見える)
[写真21]夏期晴天時の状態
 
建物の内外に光を反射するものをおき、様々な利用法を試しました。
太陽光エネルギーは、プールの水で色を変えて水色になります。水色の光エネルギーは、プール室内空間に拡散し、反射板によって再び反射して空間に戻ります。光は反射を繰返して、プール室内を明るく保ちます。
光エネルギーと熱エネルギーは、エネルギーの移動状態が、大変似ていると聞いています。上の文章の光を熱に置き換えると、次のように言えるのではないでしょうか。
太陽熱エネルギーは、プールの水の温度を変えます。温度が上がった水の熱エネルギーは、プール水表面から放射して室内空間に拡散し、反射板によって再び空間に戻ります。
反射板を利用すれば、室内空間を明るく保つことが出来るように、反射板を使って、室内空間を温かく(寒くなく)保つことが出来る筈です。

リハ研プール棟には、常時29〜30℃の水が約300トン存在します。放射熱を上手に利用すれば、快適な温熱環境を整備出来ます。
すなわち、水に蓄えた熱を、(1)上手に室内に放熱(放射)し、(2)室内に拡散した熱を、室外に喪失することを防ぎ、(3)拡散した熱を、反射板で再び室内に戻せば、低い温度(30℃程度)のプール水が、十分暖房熱源となります。
CO2排出のない、自然から与えられた熱源です。

このような実施例は少ないかもしれませんが、化石燃料(エネルギー)を多量に消費する空調暖房を設置しなくても、求める温熱環境は得られるのです。

リハ研プールの試みは、すでに2年以上経過しました。太陽の郷スポーツガーデンプール(当地二代目のプール)からでは、四半世紀の実績があり、その効果を確認済みです。

プールの温熱環境・自然エネルギー利用法等については、別途お話します。
 
2009年7月 高田準三記
   

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